2/10/2012

神戸から、被災地の「孤独死」防ぎたい

 



東日本大震災の発生から11日で11か月です。そんな中、行政の実態把握が追いついていない問題があります。それは、誰にも見取られずに亡くなる、いわゆる「孤独死」です。孤立感を強める被災者への訪問活動を続けるある男性を追いました。

 仮設住宅で被災者の訪問活動を行う定時制高校の教師、牧秀一さん(61)。去年4月から月に1度、地元・神戸から休日を使いボランティアとして駆けつけています。

 3回目の訪問となる佐藤勝雄さん(70)は、かつてマグロ漁船の乗組員でしたが、事故でほぼ視力を失い足も不自由です。孤立しがちな1人での生活に追い打ちをかけるように、見知らぬ土地での仮設暮らしが始まりました。それまで縁のなかったタバコと酒にも手をつけるようになった佐藤さん。

 「このまま死ぬのかなと思ってね、そんなこと考えるときがある。誰も来ないし困ったもんだなって。本当につらいですよ」(佐藤勝雄さん)

 そっと気持ちに寄り添うことでつらさを吐き出し1人ではないと感じてほしい、牧さんはおよそ1時間、佐藤さんの話に耳を傾け続けました。

 「(被災地は)何もかもなくなって着の身着のまま、その状態で投げ出される。それはもともと1人であってもつらい」(牧秀一さん)

 牧さんの原点は17年前の阪神大震災。被災し途方に暮れるお年寄りを目の当たりにしたのがきっかけです。教鞭をとってきた定時制高校でも、弱い立場に置かれた生徒たちを支え続けてきた牧さんにとって、時がたつほどに孤立していく被災者たちを放ってはおけませんでした。

 当時の被災者たちが仮設住宅を経て暮らしている災害復興住宅も定期的に訪問。阪神大震災の被災地をめぐる厳しい現実が今も続いているからです。誰にも見取られずに亡くなる、いわゆる孤独死をした人の数は去年だけで36人。合計で少なくとも1000人が確認されています。

 「ここ(神戸)は都会だからまだいいけど、東北はもっと(孤立が)早いと思う」(牧秀一さん)

 そんな中、牧さんのもとに思いも寄らないメールが届きました。
 「佐藤さんが亡くなられて」

 亡くなったのは、1か月前に訪問したばかりのあの佐藤さんです。牧さんは再び気仙沼へと向かいました。かねてから協力している地元の支援スタッフに話を聞くと、佐藤さんの死因は病死で、亡くなった翌日には発見されたといいます。自殺や、死後何日もたってから見つかるといった事態は避けられたのですが・・・。

 「今までやってきたことがあっていたのか、話し合いを重ねるごとに余計にわからなくなって。孤独死というものが」(支援スタッフ)

 彼女たちは支援者である傍ら、被災者でもあります。支援していた人が亡くなるという現実を受け止め切れずにいました。

 「(夜)1人になったときに病気が悪化して倒れた。かたく表現したら『孤独死』。これは誰にだってあり得ること」(牧秀一さん)

 牧さんは佐藤さんが住んでいたあの部屋へと向かいました。
 「関わっている人が亡くなるのはものすごくショック、誰でもね。自分を責めないでほしいと思う」(牧秀一さん)

 被災者自身が被災者を支える難しさも浮き彫りになる中、「人は人でしか救えない」という神戸の教訓を胸に、牧さんたちの手さぐりの支援活動が続いていきます。(10日18:08)

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