1/21/2012

もう10カ月、まだ10カ月…避難者は30万人超

 

千葉県に移り住んで15年目の初詣、初めて香取神宮(香取市)に参拝した。鬱蒼(うっそう)とした森に1700年に造営された本殿や樹齢約1千年といわれる巨杉など、荘厳な佇(ただず)まいをみせる名社である。

  同市には「佐原(さわら)」と呼ばれる地区がある。利根川の舟運(しゅううん)で栄え、江戸との関わりが深かった商都。いまでも江戸末期から明 治・大正期の店舗や土蔵などの町並みが残る。利根川の支流の小野川沿いの一角は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
全国を実測して日本地図を作った伊能忠敬(1745~1818年)ゆかりの地でもある。忠敬は17歳で商家・伊能家の婿養子になり、家業の傍ら天文暦学などの勉強を続けた。49歳で隠居した後、本格的に学ぶため江戸に出た。

先日、当地を訪ねた。小野川の両岸に軒を並べる古い建物、川沿いには荷物を積み降ろす階段状の船着き場もある。「北総の小江戸」と呼ばれるように情緒豊かな景観が続く。冬場にもかかわらず多くの観光客が訪れていた。
ただ、ここにも東日本大震災の爪痕があった。伝統的建造物の一部はブルーシートに覆われ、忠敬旧宅にはロープが張られていた。激しい揺れや液状化で建物の壁や瓦が崩落、小野川の護岸の一部も崩れ落ちたという。改めて被災地域の広さと根深さを見せつけられた。


 12日付の震災特集紙面(東京本社発行)で、福島県会津若松市に避難している同県大熊町民の仮設住宅での雪かき写真が掲載された。沿岸部から豪雪地帯への移転に「雪が不安」と語っていた住民を思い出した。昨年、幾度となく足を運んだ被災地。各地の仮設住宅の関係者に電話を入れてみた。

「仮設の人たちは、落ち着いてきた様子だけど」。落ち着いてきたといっても、将来の見通しや金銭的な不安を抱えた生活は続いている。非日常の仮設生活に慣 れてきたということだろう。被災者支援では、心のケアや健康面が増えている場所もあるらしい。ただ、慰問やイベントなどは昨秋以降めっきり少なくなったと も。いつまでも頼ってばかりではいけないという住民もいるが、一方では「忘れられるのでは」と風化を懸念する声も数多く聞かれるという。

震災から10カ月が過ぎた。仮設や民間住宅などで暮らす避難者は30万人を超す。東北をはじめ各地域の被災者の思いを、今後どのように発信し続けていくか。「被災者に寄り添った報道」を考えさせられた。(地方部長 楠崎正人)


2012/01/21 10:37

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