11/25/2011

<福島第1原発>取り残された犬 7カ月半ぶりに家族の元へ

 

新居の仮設住宅で天野さんにじゃれつくジロー=福島県郡山市で、袴田貴行撮影

福島第1原発事故で警戒区域に指定された町に取り残された犬が、7カ月半ぶりに避難生活を送る家族の元へ戻った。飼い主の天野八枝子さん(61)=福島県双葉町=は「一時はあきらめていたので、まるで夢のよう」。仮設住宅のアイドルとして、みんなにかわいがられている。

雑種犬の「ジロー」(2歳、オス)は、天野さんが09年4月に知人から3000円で譲り受け、夫(73)が尊敬する実業家の白洲次郎氏にちなんで命名。天野家の番犬としてかわいがられてきた。

東日本大震災発生翌日の3月12日に自宅から避難する際、「3、4日で帰れる」と思った天野さんは、約5日分のえさと水を置き、ジローを庭の犬小屋へつないだままにしてきた。ところが原発事故で避難は長期化。約1カ月後に隣人が帰宅した際、ふらふらで立つのがやっとのジローを見つけ、つないだロープを切って放してやった。

天野さんが初めて一時帰宅したのは6月だった。「もう野良犬になってしまっただろう」とあきらめていたが、自宅へ近づくとジローが玄関からひょっこり顔を出した。「ジロー!」と呼ぶと、走って飛びついてきた。地震で傾いた玄関のすき間から室内に入ったらしく、テーブルに置いたままにしてきたようかんやカステラを食べながら生き延びていた。自宅の権利書などがある金庫の部屋周辺にふんや足跡が集まっていた。避難した家族に代わり、一家の大切なものを番犬として守っていたようだった。

避難所でペットは飼えないため、ジローは保護施設や動物病院に預けられた。夫婦2人で郡山市の仮設住宅に移ってほどなくした10月26日、天野さんの元に戻った。

毎朝5時半、散歩をせがんで元気な鳴き声を上げる。「ジローもまた一緒に暮らせるようになったのがうれしいのでしょう」と天野さん。「ふるさとを追われ、つらい思いもいっぱいしたけれど、これからも頑張っていけそうです」

約60世帯が入居する仮設住宅では、いつしかジローの周りに人の輪ができるようになった。人なつっこいジローが、見ず知らずだった住民たちを結びつけている。【袴田貴行】


毎日新聞 11月26日(土)12時30分配信

    Choose :
  • OR
  • To comment