5/13/2011

復興利権狙い「仁義なき戦い」 避難所に暴力団 5000万円バラマキ

 


5月11日、震災から2カ月を迎えた岩手県陸前高田市。がれきは撤去され、整然と区画された道路が現れた。被災地の復興事業を暴力団の金脈にしてはならない(共同通信社ヘリから撮影)

東日本大震災の復興事業に、暴力団関係者が参入を目指すような動きをみせ、警察当局が警戒を強めている。被災地では、日本最大の指定暴力団・山口組と関係がある団体の活動も確認された。がれき除去から家屋の再建、都市再開発まで多岐にわたる震災の復興事業の総額は約15兆円とも試算される。その一部を受注するなどして“復興利権”に食い込もうとする反社会的勢力の脅威に、暴力団の専門家は「警察や行政、業界の三者で進出を食い止めることが重要だ」と警鐘を鳴らす。

震災で最大の被災地の一つとなった宮城県石巻市。街のあちこちにはいまだにがれきの山が積み上げられている。復興作業は始まったばかりだ。

石巻市に設けられた5カ所の避難所に先月(4月)21日、「西日本小売業協会」「西日本有志の会」などと名乗る集団が現れた。どこか強面(こわもて)のように見える男性らは現金3万円入りの茶封筒を被災者に配って回った。現金を配られた人と配られなかった人に不公平が生じることを懸念した石巻市の関係者は、「個人に配る形ではなく、義援金として扱わせてほしい」と求めたが、男性らはこれを振り切って配り続けたという。

同じころ、北隣の南三陸町でも、町の災害対策本部に3万円ずつ入った茶封筒の束を置いていったグループがあった。現金の総額は1000万円以上。石巻市とあわせ、総額3000万~5000万円にのぼるとみられる現金が、実態不明の団体によって配られた。

茶封筒に入った3万円。有無を言わせず被災地の人たちに現金を受け取らせようとする手法。2つの自治体に現れたグループには共通点があった。警察当局が調べたところ、いずれも山口組の最有力組織、弘道会(こうどうかい)の関係者で構成されていることが判明した。

■重機を買い占め

警察幹部は「今後、被災地では復興事業に伴うがれきの除去や建物建設、道路工事などが長年続くのは確実。弘道会は被災者に金を配ることで存在感を発揮し、事業に食い込もうとしているのだろう。最初に仁義に厚いところをみせて、徐々に利権に浸透していくのは暴力団の典型的な手口だ」と分析する。

別の捜査関係者によると、この他にも被災地周辺では複数の暴力団関係者が、復興事業に関連する動きをみせている。がれき処理事業に関わろうとしているのか、運用可能なゴミ処理施設や埋め立て地などの情報収集を開始。道路工事や建物建設のために被災地でリースなどの需要が高まることが予想される重機の買い占めも一部で始まっている。

■どう防ぐ?

過去の震災でも復興事業が反社会的勢力の資金源となってきた。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災の後には、自治体が発行する廃棄物搬入承認証を偽造して大量の廃棄物を施設に運び込ませた詐欺容疑で、元山口組系組員が逮捕される事件も発生するなど、こうしたケースは氷山の一角に過ぎないようだ。

警察幹部は「被災地のがれきの山は、暴力団にとっては宝の山。至る所に金脈が眠っている」と話す。警察庁は震災後、全国の警察に復興事業に暴力団を一切入り込ませないよう、業界と協力して動向を注視するよう指示した。

被災地の宮城県では4月1日から、暴力団排除条例が施行された。業者が経済活動で暴力団を利用することや、金品を受けたり、供与したりすることを禁じ、違反者には勧告や公表などの措置を取る。ただ、巧妙に一般企業を装う暴力団関係企業もあり、条例が十分に機能するかは不透明だ。

長年、暴力団問題に携わってきた犬塚浩弁護士は「近年は本当に暴力団に関係するのか、それとも普通の企業なのかを判断することが難しくなっている。条例の適用を厳しくしすぎれば、復興事業の停滞にもつながりかねず、バランス感覚が求められている」と話している。

(SANKEI EXPRESS)

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