4/21/2011

人への風評被害 心ない仕打ち恥ずかしい

 




福島第一原子力発電所から10キロ離れた場所を通行止めに 4月12日
Photo Credit: Koichi Kamoshida, Bloomberg

福島第1原子力発電所の事故に伴い、福島県から避難を余儀なくされた人たちが、避難先で心ない扱いを受ける事例が報告されている。

生命や健康被害への強い不安が根拠のない差別的な行動を生みがちなことは、感染症の流行などでもしばしば経験してきた。国難というべき状況下でこそ、節度を持った行動が社会に求められることを改めて認識しておきたい。

茨城県つくば市では「避難者の健康被害と市民の不安を取り除くため」として、福島県からの転入者に放射線測定器によるスクリーニングの証明書提示を求めていたことが発覚し、市は「配慮が足りなかった」と陳謝している。

この他にも、福島県民であることを理由に飲食店への入店やホテルの予約を断られたり、避難先の学校で「放射能がついている」と子供がいじめを受けたりするとんでもないケースが増えている。

住み慣れた土地を離れて避難生活を送る人たちは、国難の最前線で闘っている人たちでもある。不安のあまり、その人たちを二重に傷つける言動がいかに心ないものであるのかは、改めて指摘するまでもない。

同時に、そうした不安が無制限に広がらないよう、政府には正確な情報を一般に理解できるかたちで繰り返し伝える責務がある。

文部科学省のデータによれば、福島市内の最近の放射線量は毎時1・9マイクロシーベルトで、この1カ月間ずっと野外で生活したとしても胃のX線集団検診2回分でしかない。胃検診の受診者を危険だといって避ける人はいないだろう。

その意味で、枝野幸男官房長官が19日の記者会見で、過剰な反応を避け、福島の人たちを温かく受け止めてほしいと丁寧に説明したことは評価したい。ただし、説明の中で「放射線についてはいわゆる感染症のようなかたちで、うつったりするものではないとの客観的な事実がある」と語ったのはいただけない。

かつて、ハンセン病やエイズなど感染症対策の分野で、感染に対する社会的な不安や恐怖の感情が、病と闘う当事者への強い偏見と差別を生み出し、合理的な対策の遂行を困難にしてきた。その苦い経験を思い出してほしい。

被災者を排除することは、人として絶対に許されない。心からの支援を強く訴えたい。


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