4/17/2011

命と引き換え母子3人救う 宮城県石巻市

 


被災した時と同じ場所で再会した(右から)高橋茜さん、蓮君、芽生さんと
梶原貞子さん。梶原さんの夫、勝雄さんは高橋さん母子を津波の濁流から
引き上げて息絶えた=10日、宮城県石巻市


東日本大震災で、一人の男性が母子3人を救った後、息を引き取った。宮城県石巻市の梶原勝雄さん(67)。津波の濁流の中、屋根の上に取り残された3人を助けるため飛び込んだ。子供たちに「強く生きて」と願う妻の貞子さん(60)。生きたくて、助けたくて、あの日はみんな必死だった。

3月11日。「助けて!お願い、助けて!」。流されてきたアパートの屋根の上で、母親と幼い子ども2人が泣きじゃくっていた。

高橋茜さん(32)と長女芽生さん(8)、長男蓮君(4)の3人。自宅2階の窓から屋根に上がったまま200メートル流された。目の前の家に、すがる思いで叫んだ。

■自らは力尽きる

距離5メートル。自宅1階が水没し2階に避難していた勝雄さんは、物干しざおを手に隣の電柱に上った。さおを伸ばし「これをつたって来い」。

芽生さんがぶら下がったが、すぐに落下。勝雄さんは水に飛び込んでつかまえ、貞子さんが引き上げた。

「ここまで泳げ」。電柱にしがみつき叫ぶ勝雄さん。茜さんは蓮君を抱いて飛び込んだ。

もがいていた2人を勝雄さんがつかむ。蓮君を受け取り「おまえは先に行け」。茜さんはといをつかみ家に入った。

勝雄さんは意識を失いそうだった。だが蓮君のことは強く脇に抱えていた。「お父さん、頑張って」。叫ぶ貞子さん。もうろうとしながら進んできた勝雄さんから、茜さんが蓮君をもぎ取る。貞子さんも勝雄さんを家に引きずり込んだ。だが、息はしていなかった。


「無我夢中だったけれど、とても長く感じた」と貞子さん。寒くて眠れず、家にぶつかる車やがれきの音におびえて過ごした夜。翌朝、消防に助けられてから、初めて茜さんと自己紹介し合った。

■「孫だと思って」

4月10日。4人はがれきだらけの同じ場所で再会した。震災までは顔も名前も知らなかった二つの家族。「助けてくれたおばちゃん」と芽生さん。「おじちゃん、どこ?」。蓮君の無邪気な声。「土の中で眠ってるんだよ」と貞子さんが優しく答えた。

元気に走り回る2人を見つめながら「うちは孫がいないから」と貞子さんが言うと、茜さんは「孫だと思ってください」と笑った。

「どうしてここに流されてきちゃったんだろう」。貞子さんはそう思ったこともある。溶接工として30年以上働き、寡黙でお人よし。困っている人がいたら、見て見ぬふりはできない人だった。そんな夫が命を懸けて救った親子。「どうか強くたくましく生きてほしい」と願っている。


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