4/23/2011

切れた136万回線 一本ずつ 通信インフラ復旧 遠い道

 


回線の一本一本を手に取り、接続の確認作業を続けるNTT関連会社の作業員=岩手県陸前高田市のNTT東日本陸前高田通信ビル(写真:産経新聞)

東日本大震災で寸断された通信網が、4月末にも復旧する。NTTグループでは固定通信136万回線、携帯電話基地局約6700局で障害が発生し、「通話」が遮断された。急ピッチで通信インフラの復旧が進む被災地を訪ねた。

「ライト、ライト。69番お願いします」。暗く静まり返った洞窟のような場所で、作業員のかけ声がこだまする。壊滅的なダメージを受けた岩手県陸前高田市のNTT東日本の通信ビル。一般家庭や事業所をつなぐ電話回線の拠点である3階建ての通信ビルは大津波で屋上まで冠水し、がれきで埋め尽くされた。

電気も通らない中で、NTT東西の社員ら約30人がビル内に入り込んだがれきをどかし、端子板など回線機器の泥を取り除いて、一本一本の回線が「生きている」か確認作業を続けた。右手にはペンチ、左には細い導線の束。「通信ビルが心臓だとしたら、回線は血脈。地道でていねいな作業が必要になる」と、NTT東日本岩手の吉田隆・サービス運営部門長は言う。

震災後、通信ビルを通じて高台にある臨時市役所用に通信を再開した。さらに、仮設発電機で交換機を稼働させ、一般家庭など400世帯以上を回復させたが、道半ば。吉田部門長は「すべての電話が通じてやっとマイナスがゼロになる。本当の復旧はこれから」と表情を引き締めた。

携帯電話も通信網が分断された。「これは東北だけでは対応できない」。NTTドコモの福島弘典・災害対策室長は震災直後、テレビの画面を見て直感した。すぐに全国の支社に電話し、移動基地局や衛星携帯を東北に集めるように手配した。災害伝言板を立ち上げ、携帯電話の通話規制を最大90%実施した。

15分ほどして、津波被害の映像が流れた。「具体的な被害はわからないが、津波を見て設備が危ないと感じた」(福島室長)。携帯電話の電波をやりとりする基地局は耐震強度は強い。ただ、「今回のような津波は想定していなかった」。

倒壊は免れた。が、長い停電でバッテリーが枯渇し、サービスが中断した。間もなく、複数の基地局を統括する交換局にも電力切れの危険が迫った。交換局の機能が止まると、経由するすべての通話が停止し、地域をまたぐ遠距離通話も不通になる可能性がある。

ディーゼル発電機の燃料はもって数日。タンクローリーで調達し、ドラム缶でも運んだ。福島室長は「交換局を止めないためにあらゆることをした」。20日時点でサービスが中断している約470局の復旧を急いでいる。

「改めて通信の責務の重大さを痛感した」。NTTの三浦惺(さとし)社長は話す。被災地では遠方の親戚(しんせき)と連絡が取れず、安否確認もままならなかった。

陸前高田市鳴石が丘の女性(64)は「電話が通じないまま、親戚が会いに来ることも多かった。仕方ないが、こういうときこそ電話が通じてほしい」と話す。

NTTはグループで1万人以上を投入し、当面の復旧はめどがついた。ただ、町の大半が被害を受けた地域では行政の復興計画が今後の通信インフラも左右するため、三浦社長は「本格復旧は地域事情を十分に見ないといけない」と、遠い道程だとの認識を示す。

過去の震災に比べ、安否確認に携帯電話を使用するケースが増え、インターネット電話が通じやすいことも注目された。だが、NTTの担当者は「通信の手段がいくら変わっても、いつも身近で使えるようにするのが我々の使命です」と語った。(森川潤)


産経新聞 4月23日(土)7時56分配信

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