4/25/2011

キャンセル68万人 損害74億円 原発風評 旅館、ホテル直撃

 

福島県内の旅館・ホテルの宿泊予約をキャンセルした客は東京電力福島第一原発事故以来、延べ約68万人で、被害金額は74億円に上ることが県旅館ホテル生活衛生同業組合の調査で25日、分かった。組合は少なくとも秋まで新規予約が見込めないとみている。風評被害の直撃を受けた経営者は、「このままでは持たない」と国や東電に対し補償や支援を求める声を上げている。

組合によると原発事故後、5月の大型連休までの予約が解約されるようになった。17日に東電が原子炉安定までの期間を6~9カ月と発表すると、解約は秋の行楽シーズンまで拡大。観光客の予約はほぼなくなった。

いわき市の温泉地の旅館には原発事故直後から毎日20件程度の解約の連絡が入った。経営者は「放射能が怖いと言われた。今後、客は来るのか」と危機感をあらわにする。県北地方にある温泉地のホテル宿泊者は被災者や震災処理の関係者だけだ。被災した建物の修繕費も重く経営にのしかかり、経営者は「金融機関への借金返済ができない。このままでは従業員の雇用維持は難しい」と悲鳴を上げる。

宿泊客の大幅減少は、土産物や食材、クリーニングなどの納入業者の経営も圧迫しているという。
郡山市磐梯熱海温泉で旅館業を営む菅野豊理事長は「風評被害の補償は当然。国や県などに風評被害の沈静化に向けた支援を求める」と強調した。組合は花見や登山の観光シーズンの3月~6月で250万人の観光客の宿泊を見込んでいた。

■厳しい数字、頭抱える

ここまで厳しいのか-。25日、郡山市磐梯熱海温泉のホテルで開かれた県旅館ホテル生活衛生同業組合の理事会。事務局から風評被害の算定結果が報告されると、会場は重苦しい雰囲気に包まれた。

理事約40人は険しい表情で資料に目を落とす。事務局が「夏休み、秋の行楽シーズンの新規予約も皆無と予想される」と説明。声にならないうめき声が漏れ、何人かの理事がたまらず頭を抱え込んだ。「国や東電にどう責任を問うていくのか」。質疑に入ると、県南地方の理事が語気を強めて菅野理事長らの考えをただした。

県外の避難先から駆け付けた相双地方の理事は「組合にとって補償こそが最重要課題。全国の組合を巻き込んで強力に働き掛けていくべきだ」と訴えた。

■復興作業で満室 県内市街地のビジネスホテル

県内の中心市街地にあるビジネスホテルは復興作業などの関係者による一時的な需要があり、空室は少ない状態だ。福島市のあるビジネスホテルは震災後一カ月は休館していたが、再開後はほぼ連日、工事関係者らで満室となっている。

郡山市のJR郡山駅近くのあるホテルは複数の保険会社の調査員らが長期滞在している。一般の泊まり客用は少数しか残っていない。震災を受け、多くのイベントが中止になり、キャンセルも多数出ているという。ホテル関係者は「復興関係者の需要は限られた期間だけ。早く自粛ムードや原発事故が沈静化してほしい」と話した。

【写真】風評被害の大きさなどを示す資料を見る理事ら=郡山市、25日午後1時40分


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